ユキの奇跡

学校…孤独。

　「おはよう…」
　「あ、ハナ、おはよう。具合、大丈夫？」
　
　朝、リビングへ降りると心配そうなお母さんの顔があった。最近、学校を休みがちな私が心配みたい。
　
　「あ、いや…もう、大丈夫だよ」
　
　昨日の夜、ユキにはああ言ったものの、お母さんの心配そうな顔を見ると、さすがに仮病を使う気にはなれなかった。
　
　「今日は、学校、大丈夫なの」
　「うん。行ってくる」
　
　笑顔で言って、朝食を急いで食べると、制服に着替えた。
　「行って来ます！」
　「いってらっしゃい」
　
　嬉しそうなお母さんの笑顔に、元気よく家を出た。
　学校へむけて歩きながら、近づくたびに気持ちがだんだんと重苦しくなってゆくのがわかる。
　クラスメートに「おはよう」って言おうと思っても、喉がからからに渇いたようになって、声が出てこない。
　楽しそうに登校している女の子たちの視線が、私を笑っているように見える。
　人が怖い。そんな風に思うようになったのはいつの頃だろう？被害妄想って、始まるともう、なかなか止まらない、暴走列車みたいだ。
　人が自分を好きになるわけがない。そう思うようになってから、人との関わりが普通には出来なくなっていた。
　
　「こらっ！クラスメートにはおはよう、でしょ？」
　「でも、私なんかが挨拶したら、迷惑だよ、きっと」
　　
　ユキの声に、私は力なく答える。
　なんで私、こんな風になっちゃったんだろうな…
　
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