我妻教育

「啓志郎、お前にはお前なりの考えも都合も色々とあるだろう。それは未礼チャンにとっても同じことだ。

俺や親父の立場から言わせてもらえば、すんなり婚約が決まってくれるにこしたことはないんだが、最終的に尊重すべきは、結婚する二人の意思だと思っている。

できるなら無理強いはしたくない。
快く受けてもらいたいんだ。
わかるな？」

「…はい」

「正月まで３ヶ月あるが、その期間を無駄にしちゃいけない。
未礼チャンと仲良くやって、お前自身を気に入ってもらえるように努力するんだ。

いいか？今年中に、未礼チャンから婚約の快諾とともに、正月うちに来てもらう約束を取りつけておくように」


「承知しました」


私にそう言い聞かせると、父は満足気な顔で、念を押すように力強くうなづいた。


それから内緒話でもするかのように、私の肩を抱き寄せて、耳元で熱く語りだした。愛について。

恋愛観にオープンな父は、自己恋愛論を説くのが好きで、この手の話は耳にタコができるくらい何度も聞かさているゆえ、今回は割愛させてもらうが、

一言で要約するなら、「女性には常に優しく接するように」といったような内容だ。


そのまま話の流れが未礼の容姿に移ると、父の口調はさらに熱がこもっていく。

「未礼チャンのあまりの可愛さにお前もびっくりしただろう？
いやぁ、俺もじかに見てびくりした！！」

「…そうですね。美しい方だと思います」

「あの可愛い顔でスタイルも抜群なんて最強だよな～！
スリーサイズ見たか？…ありゃFカップはカタい！！いやＧはあるかもしれんぞ…。
お前うまいこと言って聞いてみてくれ。
…いいなぁ～、ウハウハだな！うらやましいなぁ、おい」

「………」

もともと父も乗り気の見合いではあったようだが、実際に未礼と対面して、そうとうお気に召したらしく、私の頭を小突きながら、絶賛している。


「…－なんだその冷めた目は。相変わらずノリが悪いなぁ～もう。
カタいぞ啓志郎！！
いいか、仕事ばっかできても男はダメなんだ。
ジョークの一つもとばせんようじゃ、女の子にはモテないぞ☆」