我妻教育
私は、手を差し出す。
未礼も、すぐに応じる。


未礼をエスコートして舞踏会場へ入った。



パーティーにおける女性のエスコートの仕方を、以前、無理矢理父に習わされていたことを初めて良かったと思った。

そつがあっては失礼にあたる。




会場に入ると、やはり我々は注目の的であった。


「啓志郎くん!踊ろう!!」

ざわめき立つ空気を、未礼は気にもとめず、私の手を引き、楽しそうにクルクルとステップをふむ。


白いドレスとゴールドのネックレスが揺れて、目に焼き付いた。







未礼は、愛くるしい笑顔をもった人だった。

見ている者の心を和らげる。




例えるならば、

花がほころぶ瞬間にでも立ち会ったような
小さな幸福感にも似ていて、


その花は、

散れどもなお
色あせることなく、

胸のうちに居座り続け、
長く私を苦しめることになる。








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