我妻教育

4.婚前遠足

前月の後夜祭後、松園寺家と、垣津端家の婚約に関する噂が一気に広まった。


だが、特に危惧していたような面倒なことは、おこらなかった。


まだ正式な婚約発表ではないし、何より家の者が上手く対処してくれたのだろう。

さらに、この私に対して直接婚約の真偽を問おうなどという不届きな輩も、そうはいない。

水面下では、あらゆる噂や憶測が飛びかっているのだろうが・・・。




11月に入ってからも、ひとまず平穏な日々が続いていた。



「おはよう啓志郎くん!!朝から精が出るね!」


休日。

庭で、竹刀を振っていた私に、縁側から未礼が声をかけてきた。
手をとめ、振り返った。
未礼は、起きたばかりで、ぼんやりとした顔をしている。


「おはよう。もう起きたのか?」


休みの日は、急かして起こすようなことはしていない。

が、ほっとくと未礼は夕方になるまで寝ているので、ブランチがとれる時間には起こすようにしているのだが。


「えへへ・・・、トイレに起きただけ」

未礼は、寝癖の頭をかきながらヘラヘラと笑った。


「休みの日だからといって、無駄にダラダラと過ごすともったいないぞ」

私は、素振りを再開させた。

「ん~、わかってはいるんだけどね~。特に予定もないし」


「勉強でもしたらどうだ?エスカレーター式だとはいえ、大学に入るには、一応試験があるのだろう?」

試験といっても、「名目上」であって、落とされることはない、とは聞くが。


「え~!!中間テスト終わったばっかりなのに!勉強やだー!!」

もうすぐ18になるというのに、子どものような反応をする。
中間試験時も、ほとんど勉強などしていなかったように見えたが・・・。


私は、素振りをしながら考え、提案した。


「そんなに暇なら、どこかへ出かけるか?」


「え!!!」

未礼は、驚いたような、弾んだ声を出した。


「そういえば、まだどこへも連れて行ってやったことがなかったと思ってな。
せっかくの休日だ。天気も良い。出かけるのも良いだろう」










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