我妻教育
『未礼さんを我が家で預かることになりました。
光寿氏の了承も得ています。
客人としてお世話致す所存でございます。
カノンは元気です』

父にそうメールを打つと、


『同棲か!!やるな(#^ 3 ^#)ヒューヒュー☆
流石は俺の息子だ!(*^▽^*)!頑張れよ♪』

詳しい説明もしていないというのに、なんとのん気なことか。
いともたやすく承知してくれたのだ。




教育を施すにはまず、未礼の性質を十分に理解することが先決であると私は考えた。

よって、しばらく未礼を観察することにしたのだ。


未礼には、あらかじめ気づかいも遠慮も無用。
楽にしてくれと告げてある。


その言葉通りの未礼の態度、とでも言おうか。

夕食後。

未礼は、課題途中のノートをテーブルに広げたまま、前のめりになり、乳だけテーブルに乗せていた。
そして首をすくめ、うつむいて、乳の上にあごを乗せている。

…枕がわりにもなるとは…便利なことだな。

そしてシャープペンシルをくわえてブラブラと揺らしている。
どうも目はうつらうつらと眠そうだ。


見た感じでは、不幸な生い立ちをしているようにはとても思えない。



私たちが今いる場所は、我が家の客間の一室だ。

我が家自慢の庭園を望む一階縁側付きの八畳の和室。


未礼が、我が家のリビングダイニングは、だだっ広くて高級で落ち着かないと言ったので、
この客間を私たち二人の居間にすることにしたのだ。
家具は、こたつテーブルとテレビという、まだ簡易な居間だが。


私たちは、二人の時間の大半をここで過ごすことになる。



ちなみに、ふすま一枚続きでつながる隣の和室を、未礼の部屋とした。




「啓志郎くんは、さみしくないの?」

唇からペンが転がり落ちたかと思ったら突然、未礼が目線だけを上げて私に問いかけた。


勉強する手を止めて聞き返す。
「さみしい?何がだ?」


「だって、ご家族みんな、今お家にいないでしょう?」

「確かに家族は皆、家を空けてはいるが…」

「でしょ。こーんな広い家だとさみしいでしょ」
未礼は、探るような上目遣いで私を見た。



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