【短編】また…いつの日か
仕事を始める8時半になると、部長が立って話しはじめた。
「みんなもう気づいていると思うが、東はもうこの部署にはいない。」
「東さんはどこへ?」
そんな声が聞こえた。
「東は…昨日付でイギリス本社に移動した。」
イギリス…本社……?
部長の答えにまわりがざわつく。
「これは3ヶ月前から決まっていた事だ。
だが、東本人がみんなには言うなと。」
「そんな…あたしお礼言いたかったのに……」
「あたしだって…」
すすり泣く声も聞こえる。
俺が新人で入った時に聞いたその人の印象は『冷たい』だった。
みんな慕うどころか、怖がっていた。
だけど、今はみんながその人を慕ってる。
仕事もできて、最近は笑顔も見せるようになっていた。
『憧れ』って言ってるひともたくさんいた。
「それから、東から手紙を預かってる。」
部長の言葉にみんな息をのんだ。