天使のいいなり
「赤ちゃん、お腹にいるの。」






「里緒…、それ本当?」

「うん。8週目だって。」


驚いた遼くんの顔が、みるみるゆるんできた。
目の前には、大好きなくしゃくしゃの笑顔。


「すっげー嬉しい!!つーか、こんな重いもん持ったらダメだろ!?赤ん坊に負担がかかる。」

「これくらい平気だよぉ。…でも、ありがとね。」



遼くんが私を抱きしめ、そしてゆっくりと優しくお腹を触る。
サラサラの黒髪が、風に揺れる。
もう、遼くんってば顔ゆるみっぱなしだよ。


「ねぇ、遼くん。どっちだと思う?」


私は遼くんの顔を覗き込む。


「そりゃ、もちろん。」


返事はきっと、こうだよね。



「「男の子。」」

私と遼くんの声が、ピッタリと揃う。

そして、部屋に飾ってある3人の絵を見て微笑んだ。



もうすぐ会えるね。
私と遼くんの、愛しい愛しい“天使”。



         『瑞己』


                       fin.







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