愛しいキミへ
「いらっしゃいませ。ご利用泊数はいかがなさいますか?」

仕事中はできるだけ沙菜のことを考えないようにして集中。
特にレジはお金を扱うから、余計なことを考えてはいけない。

もうすぐ終わりの時間。
すると目の前に馴染み深い顔の人物が立っていた。

「いらっしゃいま…タケ!?」
「よう!借りに来てやったぞ♪」

渡されたのはDVD三枚。
全部アニメ映画・・・まぁいかがわしいのじゃなくて良かったかな
貸し出し手続きをしながら話をする。

「一人?」
「そう!用事終わりに雅樹の働く姿を見に来た!」
「わざわざ見に来なくていいっつーの。こないだは直哉が桜ちゃんと来たよ。」
「その日バイトがなきゃ俺も行ってた♪…てかバイト何時まで?」

お金を渡しながら訪ねるタケ。
ジャラジャラとお釣りをレジから出し、タケに渡す。

「あと10分くらいで終わるよ。」
「じゃあ待っててもいい?」
「いいよ。店内にでもいてよ!」

DVDを袋に入れて渡すとタケは受け取り、出入り口ではなくもう一度店内の奥へと向かった。

バイトが終わると、タケが待ってるから急いで着替える。
また中津さんに「ご飯行かない?」と誘われたが、今日は「友達が待ってる」と断れた。

店内をキョロキョロとタケの姿を探す。
タケはCDコーナーにいた。

「お待たせ!行こうぜ!」

声をかけて一緒に外へと出る。
夜は吹く風が冷たくなり、薄手の上着じゃ寒く感じる。
秋になったと思ったばかりなのに、もう冬の足音が聞こえてくるようだ。
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