愛しいキミへ
「全然良いよ。とりあえず、入りなよ。」

沙菜を自分の部屋へと招き入れる。
少し距離をとって座る。
なんだか元気のない沙菜が、ちょこんと座っていて、いつもより小さく見えた。

「ごめんね。こんな時間に突然…話せる人がいなくて。」

俯いて話し出した沙菜を見ると、心配で仕方なかった。
本当はこんな時間に彼女じゃない人を、部屋に入れているなんてダメだと思うけど、ほってはおけないと思った。

「俺は大丈夫だよ。どうした?」
「あのね…悠ちゃん…このマンション出るんだって…。大学の近くで一人暮らしするらしいんだ。」

初耳なことにただ驚いた。
自立するってことが、悠兄らしいと思うけど、沙菜は寂しいってことかな?

「毎日会えなくなるのが、寂しいのはわかるけどさ~そんなに落ち込むこと?」
「違う…そんなんじゃない。」
「じゃあ、何にそんな落ち込んでるんだよ。」
「悠ちゃん、私に黙って決めてたの。さっき電話で知った。それで…【何で相談してくれなかったの?】って言ったら【関係ない】って…。喧嘩になっちゃった。」

話す声が震えていた。
俯く顔をよく見ると、かすかに目元が赤い。
きっとここに来る前に一人で泣いていたのだろう。

「関係ないことなのかな?…受験だったからかも知れないけど、距離置かれてる気もするの。」
「え?学校で上手くいってるみたいなこと言ってなかった?女子が話してるの聞こえてきたけど…。」

ふるふるっと首を振り、力なく笑った。

「悠ちゃんのこと好きな子って、今でも変わらずいるの。上手くいってるって言わないと邪魔されちゃう。だから、強がってみた。」
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