愛しいキミへ
ピンポーン
昔から押し慣れた呼び鈴を鳴らす。
後ろでは朝から降り続けている雨がまだ、ザアァァと音をたてていた。
呼び鈴からは返事がなく、もう一度鳴らす。

「いないのか…。」

なにも考え無さすぎたな・・・
メールのことが気になりすぎて、悠兄がいるか確認せず家を飛び出た自分に苦笑いする。
焦りすぎたぁ~
とりあえずメール返しておくか
自分の家に引き返しながら、携帯を取り出した。

ガッチャ!!
後ろでドアが開く大きな音がした。
あまりにも勢いよく開いたので、驚いて振り向く。
ドンッと振り向いたと同時に誰かと肩がぶつかった。

「いって…って…沙菜!?」

ぶつかった人を目で追うと、走り去る沙菜の後ろ姿だった。
俺の声に反応もしなかった。
あれ?
あの後ろ姿は沙菜だよな?
バタンッ
扉が閉まる音がした。
もしかして悠兄の家から出てきた・・・?

もう一度、悠兄の家に向かい今度は呼び鈴を鳴らさずに、扉にむかって声をかけた。
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