愛しいキミへ
「悠兄ー!いるんでしょ?雅樹だよ!!ちょっと話したいんだけど!」

ガッチャ…
さっきとは違い静かに扉が開いて、悠兄の姿が見えた。
暗い顔をしていて・・・なんだか頬が赤い気がした。

「やっぱりいた。今、沙菜が飛び出してきたけど…なんかあったの?」

悠兄は下を向いたまま、何も言わなかった。
こんな感じは初めてだった。
なにかあった時でも「大丈夫」って言うか、正直に話すのが悠兄だから。

「悠兄?メールも意味がわかんなかったし…。」
「…話すから、とりあえず入れ。」

走っていった沙菜のことが気になるけど・・・
まぁ感情的になることはよくあるし・・・大丈夫かな
悠兄に言われた通りに、家の中へと入った。
玄関脇の悠兄の部屋に通される。
そこには可愛らしい鞄がポツンと置いてあった。
おそらく沙菜のだろう。
鞄を置いたまま出ていくって・・・どんだけ感情的になったんだか・・・

「沙菜、鞄置きっぱなしだけど…どうしたの?けんか?」
「…怒らせちゃった…のかな。」
「やっぱり~いつものかんしゃくか。本当に沙菜は感情的になりやすいよね。」
「…そんなんじゃねぇよ。俺が悪いんだ。」
「悠兄はいつもそう言うじゃん。」

俺はベッドに座って、悠兄は椅子に座って話した。
下を向いたまま暗い顔をする悠兄を笑わせようと「なに?沙菜のこと襲おうとでもして怒らせちゃった!?」っと冗談まじりに喧嘩の原因を聞き出そうとした。
聞いといて、本当にそうだったらどうしようと内心焦った。
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