愛しいキミへ
【俺も熱くなりすぎてごめん。悠兄のこと信じてる。
理由話してくれるの待ってるよ。】

信じよう。
今まで一緒に過ごして、見てきた悠兄のことを。
俺が悠兄に怒って、恨むのもなんか違う気がするし・・・
沙菜を抱きしめられたのは、紛れもなく二人が離れたおかげなのだから──

もう夜遅かったが、母さんから沙菜の鞄を受け取り、届けにだけ向かった。
携帯も入っていたし、渡さないと困るだろう・・・それに連絡が取れない。
家に行くと沙菜のお母さんが出てくれた。

「具合が悪いのか部屋から出てこないのよ~。びしょ濡れで帰ってきたから、風邪でもひいたのかしら。」

そうか・・・部屋にこもりきりなのか・・・
会うのは難しいと判断し、鞄を預けて帰った。
はっきりとした返事をもらったわけじゃないから、少しでも話したかったし心配だった。

「…くっしょんっ!!」

ぶるっと体が震えた。
やべぇ~なんか寒くなってきた・・・
さすがに、雨に打たれ過ぎたか・・・

震える体を温めようと、布団に潜り込んだ時、携帯が鳴り始めた。
少しカタカタとなる手で開くと、沙菜からの電話で慌てて出る。

ピッ
「もしもし。沙菜?…大丈夫?風邪ひいたりしてない?俺、ちょっと怪しいかも。」

さっきまでのことが少し気まずくて、わざと明るく振る舞った。
無言の沙菜に、不安がよぎる。
もしかして・・・断りの電話?
寒かったはずなのに、背中に汗が流れた。
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