不協和音は愛の始まり

2、突然の来訪者

靴を履こうとしていた川畑は、玄関から素早く身を翻すと、チッチッチッチッ…とリズミカルに舌打ちをしながらスタスタと歩いてリビングへ戻り、電話を取った。
「はい。あぁ…」
思わず耳をすまして聞いてしまう。
「うん。…いつ?」
親しい気な感じ。誰からだろう。
「それはいいけど…急だね」
川畑は暫く黙って聞いている。
「…わかった。気を付けて」

私は好奇心いっぱいで電話を切った後すぐにでも聞きたくてうずうずしていたが、舌打ちのリズムと共に玄関に来た川畑の一言は余りにも予想外で、私はうちのめされてしまった。
「今夜は家に帰りなさい」
「え…」
目の前真っ暗、崖からまっ逆さまに落ちた気分。
「母が来る」
あ…電話の相手はお母さんだったのかぁ。
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