不協和音は愛の始まり
私は納得したと同時に、チクッと小さな胸の痛みを覚えた。
「ウィーン空港からかけて来た。夕方には成田に着く」
本当に急な話だ。
「…夕飯はどうしますか?」
「母が居る間は食事はいい」
「わかりました」
それもそうだ。川畑にとっては、久しぶりのお袋の味だろう。
馬鹿な事聞いちゃったな…とうなだれた。

学校から帰ったら洗濯物を取り込んで私の物はまとめて行かなきゃ…とぼんやりと思って、ハッとした。
無意識の内に、川畑邸に帰り自分の家に行くと思っていた事に気付いて、寂しくなった。

< 11 / 57 >

この作品をシェア

pagetop