やくざな主人と生意気ペット
「お兄さんさ、最近の音楽業界の特徴わかる?」
いきなり話を変えられる。
誰かに似ていて少しムッとする。
「最近はね、タレントがちょっと歌出したら爆発的に売れちゃうの。だから僕らみたいな真面目に音楽やってる奴はやってらんなくなっちゃうんだって」
「藤本さんも苦労してはるんですなぁ」
アキラが面倒くさそうに同情する。
どうやら時間が押しているらしい。
「藤本、お前はさ、一人で音楽やってんじゃねぇだろ?ドラッグなんかやってメンバーに申し訳ねぇとか思わないの?」
「え、なになに?まさか僕を説得してんの?別にいいけど君らが損するだけじゃない?ほんとおもしろいね、お兄さん」
「まあこないなもんは需要あるし、他に売ったら済むことなんですけどね」
アキラも乗ってきたのは予想外だった。
こいつの場合は、こはるを悲しませたくないだとか、そんな理由でだろう。
「こいつの妹こはるちゃん言うんやけどな、ほんま藤本さんの音楽が好きらしいんや」
「そうなんだ」
「たとえ大勢の人間に無視されたって、たった一人でも自分の魅力に気付いてくれる人がおったら幸せなんと違うかなぁ?」
ほう、アキラもたまにはマトモな事を言うじゃねぇか。