ページェント・イブ ~エリー My Love~【長編】
玄関も純和風………。

天井は二階へと吹き抜けていた。
見上げると、空気を拡散させるファンがくるくると廻っている。

………玄関だけで既にアタシの部屋(6畳間)ぐらいあるんですけど………。

玄関正面には床の間があり、“新春”を思わせる生け花が、豪華絢爛と言わんばかりに出迎えてくれた。

南天の深紅、梅の白―――――。
花実は小さくとも、それぞれの存在を巧みに引き立たせるステキな生け花だった。

シンのお母さんが生けたのかしら?
………茶道家元なくらいだから、生け花とかもやるんだろうな………。

あっ!
玄関に靴が一足も並んでないし!
つっかけサンダルとかは?

フツーのクローゼットみたいな大きさの下駄箱には、一体何足ぐらい入るんだろう……?

アタシは、ただただ。
キョロキョロと、落ち着きもなく辺りを見渡していた。
都会に出てきた田舎者みたいに。

「………ちょっと何コレ?料亭みたいだね」
ボソッとシンに囁く。

「そうか?俺は普通かと思ってるけど………俺は和風より洋が好みだな。スタイリッシュでシンプルモダンな家がよかったな」

何を贅沢言うかっ!
そう思い、シンを軽く肘で小突いたその時。

「いらっしゃいませ………」

奥から、女性の声がした。
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