ページェント・イブ ~エリー My Love~【長編】


―――――家に着いてから


アタシは家族の顔を見ず、ひとり部屋へ入った。


お母さんが

『衣理!帰ってきたの?真ちゃんは?』

って、ドア越しに声かけてきたケド、アタシは寝たフリしてた。


枕を抱えたままベッドに伏せる。


ゴメンね、お母さん。
今夜はこのままひとりで居させて。


カラダを横にし、胎児のように丸まる。


鼻緒が切れたトキ、躓(つまづ)いて擦りむいた膝。
そこには、傷の上から貼られた絆創膏。


ノブが貼ってくれた、絆創膏。

アタシは、その指先で絆創膏の上をゆっくりと撫でる。


もし、アタシがあのままひとりでいたらどうしていたんだろう?

もちろん、ひとり自力で帰るコトはできたケド………。


やめやめっ!
これ以上考えたら、頭ン中と胸の奥が沸騰しすぎて爆発しそう………。


ベッドの上に置いといた巾着から、ケータイを手探りで取り出す。

パカッと片手で画面を開いてみる。
………シンからの連絡は、ない。

時刻は22時を10程過ぎていた。

ケータイを閉じ、適当に左の耳元あたりに置いといてみる。


シン、まだ仕事かな………?


横向きに体勢を変える。

目の前にある鳴らないケータイを見詰めるのが、今のアタシは精一杯だった………。


淳子さんが言うように、自分のキモチをハッキリさせなきゃいけない………。


だって、こんなキモチじゃあ、シンにもノブにも向き合えなくなる………。


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