ページェント・イブ ~エリー My Love~【長編】


「―――――なぁ、衣理?」


「………なぁに?」


「……………」


電話の向こうで、何か言い出すことを躊躇っているようにも思える、無言のトキ。


何だろ?


「これからは、“友達同士”として付き合っていきたいと思うんだけど………どうかな………?」




“友達同士”―――――


そのコトバが胸を貫いた。


「………そ、そんな何………?急に改まって…………」


「……………いや、俺…過去が過去だからさ………衣理にひでぇ事してきた前科モノが、こんな事言えた義理じゃねぇんだけどよ………。あ、別にこの姿が実はカモフラージュで、後で衣理を陥れようとか、そーいう事は絶対ないから………」


ノブのオロオロした雰囲気が、電話回線を通じてアタシに届く。
アタシの胸の鼓動が、どくんどくんいって、身体中に弱電流が走っているかように微弱ながら震えてるのが解る。


「………力になってやりたいんだ」
「えっ?」



「春に衣理と仙台駅で偶然会って、スタハで話してたろ?そん時の衣理が思い詰めていた様子だったを見て、自然に“力になってやりたい”って思ったんだ。昨夜も、水嶋さんとのデートがドタキャンになってたのもあって元気なかったしな………」

「ノブ………」


「昨夜も言ったように、昔の女が不幸になるのを見てるのがイヤなんだよ………」


ノブの声が、微かに震えていた。


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