ページェント・イブ ~エリー My Love~【長編】
「―――――なーんだ、そんな事で悩んだ?礼なんか要らねぇよ。当たり前の事、しただけなんだし」
「でも………」
「まさか、衣理から電話かかって来ると思わなかったから、そっちの方がビックリだよ」
「………あン時、ケータイ番号入れたの、ノブじゃん………」
「ま、それもそーだけど」
次の日のお昼近く。
アタシは仕事休み。
ノブも休みだと知って、思い切って電話をかけた。
何年か振りにかける元カレへの電話は、緊張した。
高校時代のトキとは違った緊張感。
あの頃は、まだ純情だったというか、男の子に電話するってだけでドキドキしてた。
同じ男性でも、お父さんとか弟、親戚のおじさんやガッコの先生なんかとは全く較べモンにならなくて(当たり前か)。
…って、“好き”の度合いがダントツに違いすぎるものね。
当たり前か………。
電話が繋がらないうちにかけては切って、かけては切って。
ケータイが汗ばんで、手を洗いに行くほど躊躇(ためら)った。
でも、今日はかけなきゃって、思ったんだ。
7回コールの後、眠そうな声でノブが電話に出た。
“寝てた?”って訊くと、
“久し振りに昼まで寝た………”って、電話の向こうではあくび。
そしたら、アタシもつられてあくびが出て。
二人して可笑しくなって笑ったら、緊張が解(ほぐ)れた。
何だか、不思議な感覚―――――
何気ない会話の後アタシは、“昨夜のお礼がしたいから…”と切り出し、今に至る………。