2LDKのお姫様
『…………はぃ』



出ずに2人を追いかけようとも思ったが、悩みに悩んだ挙げ句、結局彼女は彼の電話を選んでいた。



「……………」



直ぐに返事はなかった。
今日は確か合宿に行っていた彼。



『もしもし……』



嫌がらせだろうか。もう切ってやろうとさえ思ったが。



「あぁ、もしもし」



彼の声だ。



直ぐに返事はできなかった。



『何か用』それとも『元気だった』もしくは『久しぶり』。



どれもありふれた答えばかり。



結局……



『久しぶり』を選んだ。



「久しぶり……だったかな。ごめんね。連絡してなくて」



『いや、大丈夫』



彼の声を聞くと少し落ち着いた。そして少し寂しくなる。



私が唯一、弱みを見せた人。弱みを見せてくれた人。



合宿はゼミで行っているから、女の子ばかりとは言っていた。浮気なんてしてないとは思うけど。



『来週には帰って来るんでしょ』



「いや実はさ………」










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