2LDKのお姫様
夜風が冷たい。


半乾きの髪が冷たい。


『こんばんは』


「いらっしゃい」


以外にも彼がすんなりと迎え入れたので、シオリも流されるように、すんなりと迎え入れられてしまった。


リビングではなく寝室に行くのは、まあ確かにホノカの言っていた事をはっきり否定出来なかった理由に等しい。


しかしそれが本来の目的では無い。


『あ、ちゃんと加湿器点けたのね』


「はい、言われた通りに」


やけに素直だ。


少し怖い気もする。


いつもならここで
「髪がまた跳ねてますよ」とか


「やけに可愛いパジャマですね」とか、ちょっかいみたいな事をしてくるのだが。


今日はそれが無い。


『もうお風呂入ったの』


「はい、ついさっき」


やけにニコニコしている。


怖い……。


『き、今日は取り敢えず寝ましょう。明日もお互いバイトなんだから』


「そうですね」


二人はただ寄り添って眠るだけの日も多い。


『ねえ』


「なんですか」


ベッドの上での会話はいつも背中合わせだ。


『私って猫みたいに執念深い女かな』


「え」






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