2LDKのお姫様
『だから、執念深い女かなって聞いてるの』


「い、痛いですよ」


シオリにわき腹を摘まれてしまった。


たまにだが、つねったり、引っ掻いたりすることで、シオリは怒りを表現することがある。


「別に執念深くは無いんじゃないですか。ただ……」


『ただ、何よ』


「猫みたいな所は当たってますよ」


『どういう意味よ』


怖い怖いと、シオリが迫るにつれ、大は次第に小さくなっていった。


「昔、実家で飼っていた猫によく似てるんですよね。シオリさん」


初めて聞く話だ。


「灰色の猫で、名前はネギマでした」


『それは美味しそうな名前ね』


苦笑いが止まらない。


「可愛いヤツだったんですが、自分より弱い雄猫をよく苛めるヤツで」


『私、帰ります』


「ちょっとシオリさん、話がまだ」


『どうせ私はその灰色猫ちゃんにそっくりな、苛めっ子のブサ猫よ』


「まだ話が……」


シオリは風の様に去っていった。



次の日の朝、炬燵で丸くなっている彼女を見た。大が来たので隠れたのだ。


「ネギマ、凄く可愛かったんですよ。あいつお母さんになって優しくなったんですよ。俺が今までで一番好きだった猫でした」


炬燵の中で何か、微かに彼女の声が聞こえた気がした。


仲直りはまだ出来ていない。


でもこのやっかいな猫と過ごす時間が、今は嬉しくて仕方がないのだった。





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