輝かしい変貌
家の呼び鈴を押し、しばらくすると中年のおばさんが、ドアを細く開け、顔を出してきた。
「…どなた?」
「ああ、突然すいません。町長さんにお話があり、お伺いしたのですが…」
「主人なら今出掛けてますが…」
「そうでしたか…では出直してきます」
そのおばさんの顔と声の暗さに、無理矢理家に上がることも躊躇われた。高橋さんが玄関を離れようとしたとき、
「お客さんかな?」
背後で声がした。
「ギャっ!」
宮川くんが短く悲鳴をあげる。
それもそのはず、声の主はとてつもなく、みすぼらしい格好だった。頭はエジプトの砂漠を、不精ヒゲはブラジル奥地の密林を連想させる。服も油なのか、黒く汚れ、露出している肌の部分は垢で構成されているかの様。そして鼻を切り裂くこの臭い。宮川くんは涙ぐみながらみんなの後ろに回り込んだ。
「…あなたは?」
高橋さんは恐る恐る尋ねる。
「私はこの栄町の町長をやっています、赤井といいます」
「…ち、町長?」
「えぇ、何か問題でも?」
「いや、別に…」
どこかの女優みたいな返答になってしまった高橋さんは無論、一同は驚愕していた。町長というのはもっと身なりの良い、お金持ちのイメージが基だ。それとは遠くかけ離れた男が町長とは…。
「何か用ですか?」
「あ、ちょっとお話がありまして…」
「立ち話もなんだ、中に入りましょう」
「では、失礼します」
先程のおはさんが扉を開けながら、
「あなた、この人達は…?」
「大丈夫、見かけない顔だからな」
と小声で話してるのが高橋さんの耳は捕らえていた。
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