輝かしい変貌
高橋さんはランチを食べに屋上へ上がる。彼はいつも屋上のベンチへ腰掛け、母親手作りの弁当をほうばるのが日課だ。かと言って彼はマザコンではない。むしろ母親がケチなのだ。本気で早く嫁が欲しい。高橋さんはそう念じながら食べ飽きた味の食物をメタボチックな腹に流し込む。そこに隣に座ってきた奴がいる。後輩の石川くんだ。彼は仕事は並以下の活躍ぶりだが、調子が良い。今時の若い子そのものな容姿。聞くところによると女遊びも目覚ましいものがあるらしい。高橋さんはそっと、石川くんの茶に染めた力強い毛と、ハゲ散らかってきた自分の弱めな毛を照らし合わせ、思わず溜め息をついた。
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