鈴が鳴る時―王子+ヌイグルミ=少年―
「ねぇ暁。あんた、いつから私の事見てた?」

「へ?えーと…昨日だけど?駅で見つけた」

 暁は答えてから牛乳を一気に飲み干す。

 鈴音は暁の答えを聞いて、ガックリと肩を落とした。

(なんだ…あの視線は暁じゃないんだ。じゃあいったい誰なのよ~!)

 謎はまた振り出しに戻ってしまった。

「…なあ、どうしたんだよ?」

 暁が牛乳の入っていたカップを口でぱかぱかさせながら器用に喋る。

「別に。そういえば今日は詩穂が来るから、大人しく人形になっててね」

「へ~い。そいつ今日も来るんだ」

「そいつって言わないで!じゃあ、片付けてくる」

 お盆を持って立ち上がった鈴音はそのまま部屋を出て行った。

☆★☆

 その日の午後。

 約束通りに詩穂は鈴音の家に来て、鈴音に出迎えられた。

「お邪魔します」

 今日は家族もいると言うので一応敬語で言う。

 サンダルを脱いで、ちょうど上がった時、鈴音の母・鈴香がリビングから出てきた。

「いらっしゃ~い」

 鈴音は父親似なので、あまり母親の鈴香とは似ていないが雰囲気は鈴音とそっくりだ。

 鈴音とそっくりの優しい、安心感がある雰囲気。

「詩穂ちゃん久しぶりね~。お母さんは元気?」

「はい」

 詩穂ははにかみながら言う。

 詩穂の母と鈴音の母は高校時代からの長い付き合いだという。

 最近はあまり無いが、以前は自然と四人で買い物などに出掛けていたものだ。

「そう。お母さんは後で買い物に出掛けちゃうけど、ゆっくりしていってね」

「もう!お母さん、あっちに行ってよ!」

「あら、いいじゃない。ね?」

「えっと…」

 鈴香が詩穂に同意を求め、詩穂が困惑していると

「あーもう!分かったから!部屋に行くからね!」

 鈴音は詩穂の手を引いて二階に上がろうと促がす。

 詩穂は鈴香の前を通る時に軽く会釈をして、鈴音に手を引かれるままについていった。
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