ケータイ恋愛小説家
いつの間にかすぐ横に蓮君が立っていて、あたしにアイスティーの入ったグラスを差し出してくれた。


「えっ……。ああ、うん」


「ふーん」


蓮君はそれだけ言うと、ドカっとあたしの隣に座った。


また沈黙。

なんだか息が苦しい……。



「だっ……大輔君て、良い人だよね」


沈黙に耐え切れなかったあたしは、思わずそんなセリフを口にしていた。


「そだな。あいつは良いヤツだよ」


蓮君は相変わらず機嫌が悪く、あたしの方を見ようともしない。


――なんで?

あたしの存在ってそんなに迷惑なのかな?

なんだか泣きそうになってきたあたしは、自分の気持ちを誤魔化すために、何かしゃべらなきゃ……ってそう思った。


「あっ、そうそう!」


一生懸命口を開く。


「大輔君て、ああ見えて真面目なんだね!」


できるだけ明るく。

でないと、すぐにでも涙がこぼれそうなんだもん。


「別れた元カノのこと、今でも想ってるんだって!」


――嫌わないで……蓮君……。


「すっごい一途なんだよね……」


あたしの声はそこで途切れた。

一生懸命話してたつもりだったけど、最後はもう声が震えてた。



「ちょ……お前、泣いてんの?」

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