ケータイ恋愛小説家
バタンッ


トイレのドアが閉まる音が響く。

あたしは綾乃によって、またトイレに連れ戻されてしまったのだ。


「日向ぁ……大丈夫?」


「ほえ?」


綾乃は呆然とするあたしの目の前にズイッと近づくと、フーっとわざととらしいぐらいの大きなため息をついた。


「さっきから、隙だらけ。見ててハラハラするよ」


「隙…だらけ……? あたしが……?」


ウンウンと頷く綾乃。


「……となりの、あごひげ!」


綾乃の言葉に、ビクンと体が反応するあたし。


「……まさか、いきなり『恋しちゃった!』とか言わないでよ? さっきから日向の目、ハートマークになってるよ」


「ええええ! やっぱり?」


あたしは、慌てて鏡を覗きこむ。

ハートマーク……?

なってるかなぁ……?


「あのさぁ……」


綾乃は腕を組んで鏡越しに呆れ顔をあたしに向けた。
< 20 / 365 >

この作品をシェア

pagetop