ケータイ恋愛小説家
「相手は大学生なんだよ? 本気で女子高生と付き合いたいなんて思ってないって!」


「ええっ……?」


「そもそも合コンに本気で彼女見つけにきてるヤツなんかいないよ? みんな彼女の一人や二人ぐらいいるって。『今日一日楽しけりゃいいじゃん』ぐらいのノリなんだってば!」


「そ……そういうもん?」


「うん。日向は無防備すぎるの。いい? 甘い言葉をいちいち真に受けてどうすんの? 簡単に落とせる女なんて、男にとっちゃ都合が良いだけで終わっちゃうよ? 男なんてもったいつけるぐらいでちょうど良いんだから」


「う……うん」


あたしはゴクリと唾を飲み込んだ。

もったいつけるぐらいでちょうど良いかぁ……恋愛のかけひきってヤツよね。

さすが綾乃!

メモメモ……

あたしは綾乃の言葉を心のノートにメモる。



「……て、聞いてる?」


ぼんやりする、あたしの耳元で、綾乃がさっきより声のトーンを上げた。



「はーい……わかりましたぁ」


そう言うと、あたしはまだ心配そうにしている綾乃を残して、一人でトイレから出た。


さっきとは違って足取りが重い。


そうだよね……。

ちょっと舞い上がり過ぎだったかも……。


あたしは俯きながら廊下を歩く。

ちょうど部屋の前に近づいた頃、誰かの足が視界に入った。

そのままゆっくり視線を上げる。







「……大輔君……」


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