ケータイ恋愛小説家
「あんなのあいつらからしたら、“挨拶”程度のもんだよ。だいたい『可愛い』なんてどんな意味にも使えるから、男にとっちゃあこれ以上ないぐらい便利な言葉なわけ」


それって……。

あたしはホントの意味で『可愛い』わけじゃないってことだよね。

決してルックスが『可愛い』わけじゃないんだよね。


う……。

そんなのわかってるよ。

きっと大輔君やさっきの男の人が言ってた『可愛い』は、小さな子供に対する『可愛い』とほぼ同じ意味だ。

『子供っぽいね』って言われたようなもんなんだ。


ふと周りを見渡してみた。

すぐ隣の席には、緩い巻き髪を無造作に束ね、慣れた化粧をしたキレイな女の人がいた。

細い脚を組んで座り、ネイルが施された指に軽く挟まれた煙草がすごく絵になってる。


なんだか急に自分が場違いに思えて、あたしはギュっとスカートを握り締めた。

借り物のジルスチュアートの服は全然似合ってない気がしてきた。

鏡の前で一生懸命オシャレしてきた自分。

無理して履いた8センチヒールのパンプス。

それら全てが滑稽に思えて、今ここにいる自分をいっそのこと消してしまいたい衝動にかられる。


―――何やってんだろう。


あたしは喉に力を入れてこみ上げてくる苦い想いをなんとか飲み込もうと必死にこらえた。


「日向?」


そんなあたしの様子に気付いた蓮君の声にハッとした。
< 80 / 365 >

この作品をシェア

pagetop