『叶えたいこと』

与えられた、希望

 「僕は夢をあきらめて、もう無理だってあきらめて挫折した。…この世に」

 彼の言葉にあたしは声も出ない。やっぱりあの話は本当だったのだ。

 「いつかきっと、誰か僕を理解してくれる人が現れて救ってくれると思ってた。あんな意味のないことも、いつかやめてくれるって信じてた。だけど、ずっと終わらなかった。親にも言えなかった。心配して欲しくなかったから」

 悲しそうに、懐かしそうに話す横顔を眺めながら、胸が詰まった。すごく苦しかったに違いない。
 
 「だから、あきらめたんだ。もう僕を助けてくれる人なんかいない。友達なんて、出来るわけもない。ここで辛いのを終わらせようって」

 彼はため息交じりに言う。顔が辛そう。

 「ここから自殺して、目が覚めたら、僕はまだここにいたんだ。身体は死んだけど、魂がここに残ってた。だから僕は思った。僕の信じる気持ちがここに残ったんだって」
 「信じる、気持ち…」
 「そう。だから、僕はここで夢を叶えることにした」
 「ここで、夢を…?」
 「僕のように悩んでいる人がここに来たら、夢を捨てずに元気に立ち直れるように応援しようって。友達を作る勇気が持てるようになるまで、応援しようって」
 「応援…」
 「友子を初めて見た時、自殺しようとしてるのかと思ってとっさに声をかけちゃったけど、幽霊だってばれたら、話できなくなるかなって思った。だから何にも言わないで応援した」
 「あの時の…」

 あの時あたしは、あそこから落ちてもいいって思ってた。

 「友子は勇気を持った。だから、僕の夢は叶った」
 「そう、だったんだ…」
 「だから、もう、さようならなんだ」
 「え?さよう…なら?」

 聞きたくない、と思っていた言葉だった。幽霊って話を聞いた時から、なんとなく感じた別れ。
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