かすみ草の夢
その後、少しはまともなのを選ぼうか、とカンジ先輩は私に選ばせてくれた。

ただし、条件付き。

できるだけ、少女趣味なのを選べ、とのこと。

「少女趣味、少女趣味…」と商品を見てまわり、目に付いた白いフリルとレースいっぱいのきせかえ人形用のドレスを手に取った。

カンジ先輩は横から私の手元を覗き込み、「お、いいじゃん」と笑顔。

「でも、ドレスだけあっても、人形がなきゃどうしようもないですよね…
こっちの人形の着せ替え用ドレスみたいですけど、人形とセットにしたら予算オーバーだし…」

私がそう言うと「着せ替え用のドレスだけだからいいんだよ」と私の手からドレスを取り、カゴに入れた。

「カンジ先輩、『まともなの』を選ぶんじゃなかったんですか?」

私が苦笑いしながら聞くと、カンジ先輩は唇の端を持ち上げ、私の耳元で囁いた。

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