秘密の片思い
「どうしたんだ?怖い夢でも見たのか?」


抱きしめながら、長い艶のある髪を梳く。


「・・・怖いの」


「何が怖いんだ?」


まだ夢の続きでも見ているのかと優しく聞く。


「怖い・・・思い出したくない・・・・」


助けを求めるように郁斗の首に巻きつく華奢な腕。


「愛・・・・思い出したくなければ思い出さなくていいんだ それでも何も変わらない」


「本当?本当に?」


涙で濡れた頬が視界に入る。


可哀想な愛・・・・。


俺が守るから。


「あぁ 愛はこれからの事を考えればいいんだ」




この時、郁斗はどんな気持ちだったのだろう・・・。


あたしは現実から逃げた。


でもあの女性の驚いた顔が忘れられない。


あの顔の意味するものは・・・・?


逃げたい気持ちが独占した。



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