秘密の片思い
朝倉家の墓は都心の有名墓地にあった。


車で30分ほどの所だ。


「ここから歩くんだ」


来る途中に買ったお供えの花を手にして愛が車から出るのを見ると鍵をロックした。



* * * * * *



そして帰りの車、郁斗は心配げに助手席の愛を気にしながら運転していた。



ぐったりと助手席の背に身体を預けじっと窓の外を見ている。


墓参りの事を思い出す。




墓の前に立った愛は泣き崩れた。


しばらくは泣いているのを見守っていた。


嗚咽は止まることなく続いた。


なかなか墓の傍から離れずやっとの事で立たす事ができた。




「愛がそんな状態だと心配で天国へ逝けないぞ」


郁斗のその言葉で愛は嗚咽を堪え始めたのだった。




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