【短編】限りなく虚無に近い黒
「盗んだのって、八幡じゃね?」


みんなが一斉に見た。


言った本人じゃなく、八幡を。


いきなりクラス全員からの注視を浴びた八幡は驚きを隠さない。


えっえっ、と、困惑しながらも八幡は無実を主張する。


だけど八幡の主張は、出所不明な発言に感化され更にはストレスを溜め込んでいたクラスメートに呆気なく淘汰され、哀れにも八幡は犯人扱いされる事になった。


悪意ある行為から悪意ある扇動、一連の悪意がいじめの激化を呼んだのだ。


そしてその日から八幡はいつにも増して辛い日々を送る事を余儀なくされた。


八幡の耐えるだけの日々が始まった。


以前はまだ教師が助けてくれる事があった。しかし最近では泥棒を助ける気は一切ないと言わんばかりに知らんぷりが目立つようになった。


それどころか、寧ろ教師さえもそれに加担している。事実上、この高校に八幡の味方はいなくなった。
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