良と遼〜同じ名前の彼氏〜
「親はいねぇよ」


あまりにあっさり遼平は言った。


「いないって……旅行中とか?」


あたしは胸が高鳴っていくのを感じる。


「いねぇ。この家は下の兄貴と二人で住んでる。その兄貴も長距離トラック乗ってっからしばらく帰らねえけどな」


弁当を食べ終わった遼平は煙草に火をつけた。


その煙草は、見たことのない銘柄だった。
黒い箱の真ん中に、「JPS」と金のロゴが入っている。



「俺と、兄貴二人の合わせて三人、親父の愛人の子供なんだよ」


遼平の口から煙草の白い煙が静かに立ち上る。


「親父の愛人が俺の母ちゃん。兄貴2人と俺がその子供なんだよな」


遼平は細い目をして顔に笑顔を浮かべていた。


あたしは何も言えなかった。
ただ遼平の、煙草を口に運ぶ仕草を眺めていた。


「風呂入ってくる」


唐突にそう言って遼平が立ち上がった。
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