空色パステル


でも…

そんな儚い願いはあっさりと裏切られた。


あたしは信じたかった…。
だけど…裏切られた。


そして、あたしはみんなに嘘をついた。

いつも
『お父さんは単身赴任で東京にいるんだ』って言った。


本当は…違う。


離婚の事実を信じたくなくて嘘ついた。
心を閉ざした。

誰にも開けられないくらい固く…。



お父さんに裏切られて誰も信じれなくて…。

せっかくの友達をなくしたくなくて…。



同情とか可哀想とか思われる目で見られたくなかった…。

わからないくせに簡単に『わかる』って言ってほしくなかった。

その言葉を信じたら、それで終わり。
裏切られて以上終了。


そんな運命…もう嫌だよ……。




「美緩…綾音はわかるよ…」

知らずのうちに言葉に出ていた。
無意識に言葉が溢れていた。


綾音があたしの頭を撫でる。


綾音の目は真っ直ぐで、疑いようのないほどだった。

…信じれるかな?
綾音ならわかってくれるかな…?



「大丈夫だよ…
美緩はそのままでいいよ」


綾音の言葉に涙が溢れ出した…。


その言葉が…
一番聞きたかった。

可哀想とか、同情とか、そんなうわべの言葉じゃなくて…


ただただ、真っ直ぐに

『そのままでいいよ』

の言葉だけであたしは充分だよ…。



綾音の発する言葉1つ1つがあたしの固く閉ざした心を開いていく。



大丈夫だね…綾音なら信じれる。




もう一度だけ、信じてみるよ…




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