空色パステル


あたしの目の前で
泣きじゃくる楓。



あたしが泣かせたも同じこと。







楓は大きな瞳に涙を溜めて
あたしを見つめる。



その真剣で真っ直ぐな瞳が
あたしの罪悪感を増やしていく…




「美緩ちゃ…っ

幸せに…ぃ
なって………


あたしの分まで…

たくさん…たくさん
遼に…愛されて……」





楓の切実な気持ちが
ひしひしと伝わる。




信じていたのに裏切られた楓。



それなのに自分を裏切った
相手の幸せを願う。




楓は誰よりも……



誰よりも大人だった…









一番子供だったのは
あたしだよ……。




ごめんね…楓。











それからのあたしと楓は
お互いを避けていた。





あたしの存在は、楓を苦しめる。



楓の存在は、あたしを苦しめる。





どんなに避けても、
避けきることはできないこと…。






あたしの幸せは
楓の不幸。




そうなってしまったのは
あたしがひどい人だから…。

楓を裏切ったひどい人だから…。




ごめんね……

謝ったって、
楓が遼と幸せな日々を
過ごしていた頃には
戻れない………。



戻れない季節に楓と遼が見える。



2人は幸せそうな笑顔で
笑っていた。



あたしはこの笑顔を奪った。


本当に悔やみきれない…








「美緩ちゃん……

あたし…
願ってるね……


遼と美緩ちゃんが
幸せになれるように…


ずっと…」



楓の誓いの言葉に
涙が溢れた。




楓の誓いは、あたしと遼の
幸せを願うこと。



ならば、あたしの誓いは
楓に幸せが訪れることを
願うこと。






それは楓を傷つけたことに対する
一種の償い…。



あたしは何もできないから……。



だからここで願わせて…



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