空色パステル

―涙の理由



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「…ひろ……美緩、聞いてる?!」


ハッと我に返る。



やばい……
聞いてなかった




「ん?聞いてるよ?」



咄嗟に出た嘘。


ごめんなさい、聞いてませんでした


なんて言えるはずもなく…。




「これ…どうやって書けばいいの??」




あ、そうだ、思い出した。


今あたしたち1年生は卒業生にあげる、
卒業証書入れを制作中。




メッセージを書き込む桜型の画用紙について
友達からの質問。

ってわけ。




「なんでもいいんじゃない?」

「美緩の見せて~♪」


友達に奪われる。



「ちょ……愛菜っ…」


「この思いが この願いが
遠く遠く先輩のもとへ
届きますように……★


なんかいいねえ^^」

「えへへ…」



少し嬉しくなる。





「あれ、その指輪どうしたの?」



ギクッ……


「何のこと?^^;」


ごまかす…が、無意味だった。




「左手ってことは……
結婚指輪やん!!

やるねえ~^^♪


で、で、誰にもらったの??」




これを言ったらあたしの人生終わるよ…笑


拓弥から貰いました、なんて
死んでも言えないし……


うわあ……どうしよう……





「白状しなさい♪笑」


絶対に無理っ




なんて思っていたら

「そろそろ回収するよ~」



委員長が呼び掛ける。




あたしは委員長に卒業証書入れを渡した。


拓弥に届くことを願って……。


だから、画用紙の隅に書いたんだ。


『指輪ありがとう』って。







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