幸せ色の贈り物





「ここ、座ろう?」


マサに連れてこられたのは、駅のすぐ近くにある喫茶店。


緊張のせいもあって、あたしはさっきから頷くしか出来ないでいた。


声が出なくてよかった。


一瞬だけそう思った。


が――…


マサはさっきから一言も話さない。


そしてあたしは何も言えない。


そんな気まずい状態が何分か続き、ついに堪えきれなくなったあたしは、彼の手からスケッチブックを奪い取った。


「えっ…」


目を見開きあたしを見つめる彼の視線を感じながら、震える手で小さく小さく書いた、たった2文字の言葉。


でも、いざとなると怖くなって。


途中まで差し出したスケッチブックを、何度も何度も引っ込めた。


それでも。


“このままじゃダメだ”


そう言い聞かせて、なんとか勇気を振り絞り


ガタガタと震える手で、想いを乗せたスケッチブックを彼の手へとそっと返した。


反応が怖くて咄嗟に俯いた私の耳に、パラパラとページを捲る音が響く。


この空間の中ではかき消されてしまうはずの、そんな些細な雑音が今はやけに大きく聞こえた。






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