プライダル・リミット
 マキオはそんなことを考えながら、まもなく到着した電車に乗り込んだ。車内に空席はなく、仕方なしに吊革に手を掛けた。こういう時は乗車扉の前にいるよりも座席乗車客の前で席が空くのを待つ方が座れる確率が高いらしい。
 発車のベルと同時に駅員が電車の出発を告げると、扉が閉まり始めた。
「まもなく電車が出発いたします。か、駆け込み乗車はおやめください!」
 まるで特定の人物に注意を促すかのような駅員の口調に車内が少しざわついた。車外の様子を伺う乗車客と同じく、マキオも窓越しの車外に目をやった。
(ベタロック野郎!!)
 男が隣車両の閉まりかけた扉に向かって走ってきた。
(閉まれ! 閉まれ! 閉まれ!)
 扉の右側と左側が合わさる。
(ふぅ、よかったぁ。ザマァミロ)
 が、扉はすぐに開いた。
(!?)
 男が乗り込んできた。
(こじ開けやがったぁぁぁ!!)


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