桜色レモン味
 何か返事をしようとしたけど、私の乾いた声は、喉に張り付いたまま出てこなかった。

 ワックスで緩くまとめられた髪が、風でわずかに揺れた。
「ね、これからどこか行かない」
 ナンパかよ。軽くなったのは見た目だけじゃないらしい。
 確かに顔は整っている。女の子にチヤホヤされる類いの人だと思う。だけど、私はチャラ男が大の苦手だ。

「あたし、この後友達と」
 予定あるから、と言おうとしたけど、それは"友達"本人の黄色い声に遮られた。
「え、わたしも!行きたい!」
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