桜色レモン味
 家の前には、公園がある。特別大きくもなく、小さいわけでもない、その場所が私は好きだった。

 私が静くんを初めて見たのもそこだった。静くんは端の方にある芝生で、声を押し殺して泣いていた。誰にも気付かれないように、泣き顔を見せないようにしながら。
 それが、誰にも声をかけられたくないという気持ちの現れかもしれない、なんてことをその時の私は考えなかった。

「どうしたの」
「ミルが、し、」
 嗚咽する静くんの言葉は、はっきり聞き取れなかった。
 しばらくして、
「きて」
 私の袖をくい、と引っ張って前を歩く静くんは、まるで女の子みたいだと思った。
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