梟~幼少編~
部屋に入るや否や翼飛はベッドにダイブし仰向けになって寝転がった。視線は天井の一点を見つめる。

「そんなに俺皆に心配かけてんのか」

翼飛はそっと目を瞑った。


「迷惑掛けてるよ。翼飛」

聞きなれた声に翼飛は目を開けた。

「尚偉?」

目の前には死んだはずの尚偉が立っていた。

「いつまでくよくよしてんだよ。羽陽ちゃんがすっごい心配してんだぞ!兄としてしっかりしなきゃだめだろ?」
「尚偉…。俺は…。お前を…」
「違う。違うよ。翼飛。俺はお前に感謝してる。あそこで助けてくれたこと。うれしかった」
「しかし、俺は手を…」
「俺が手を放させた。お前には痛い思いをさせたな」

尚偉は翼飛の左腕を見る。

「翼飛お願いだ。もう悲しむな。これ以上羽陽ちゃんに悲しい顔見せんなよ。俺はお前のこと恨んでない。これからの人生、俺の分も精いっぱい生きてくれ、後悔しない人生を送るんだ。約束だぞ。翼飛」
「尚偉!」

翼飛は必死に手を伸ばす。しかし翼飛がどんなに伸ばしても尚偉を掴めない。そのうちに尚偉は姿を消した。



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