【番外編集】オレンジ色の奇跡
泣きたくない。子供っぽいって思われるのがイヤだから。
「機嫌悪ぃ理由が分かんねぇ」
「………ふーん」
「何?俺が、お前と会えなかったから?」
「…………別に」
ホント、可愛くない女。
寂しいなら寂しいって言えばいいのに。
会いたかったって言えばいいのに。
ピリリリ、といきなり乾いた音が車内に響く。
「ちっ」と、舌打ちをする耕太は、近くのコンビニへと車を入れた。
「はぁー。ミワコちゃんかよ……」
………ダレ?
「はい。もしもし」
さきほどまでと違う声色で電話にでる耕太の声を聞きながら、窓に預けていた体を横に倒す。
なんだろ。この、黒い塊。
どんどん、あたしの心の中で増殖していくこれは……なに?
「今日ですか?今日は無理ですよ。
……えぇ、はい。梨海を構ってあげないと」
え? あたしを構う?
「えぇ、すみません。……じゃ」
ため息をつきながら携帯電話を閉じ、シートベルトを外す音が聞こえた。