夢見月夜に華ト僕<連載中>

接触




「ちょっとアナタ――!」


カイが視界の中に居ない時など、片時もないほどに、しっかりとくっついて離れない私達。


それはもちろん、大学に居る時でも、例外ではなかった。



だけど、そんなカイが友達らしい“誰か”に呼び出されてしまい、

私はヒトリ、途方に暮れたような時間を過ごして、カイを待っていた。


だって、こんな場所で、カイが居ないのにやることなんて、あるわけもないし。



それにしても、さっきカイを連れてった人、切羽詰った顔してたな。

特に私を見た時の表情は、本当、恐い顔してたような……


そんなことを暇潰しにボンヤリと考えながら、アテもなく学内をフラついていると、

不意に後ろから、さっきの人と同じような押し迫る声色が飛んできた。



名前を呼ばれたわけでもないし、まばらだけど周りに人だっているのに……


どうして、自分を呼び止める声だとわかってしまったのだろう?



きっと穏やかな状況じゃないのに……


普段、誰も気に止めないようなことを、十分に考えられているあたり、

どんな時でも、私の心は冷静なのだという証明になる。



振り返ると、妙に慌てたような表情をして、睨むような目で、真っ直ぐに私を見つめる女がいた。



……知らない人。

だけど、誰なのかはわかる。



きっと、カイの彼女――



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