Cry!Cry!Cry!
~Yumi~
「ヒカルくん…あたしを強く抱きしめて…もっと強く…っ!」
あたしはぶっちょ先輩の後頭部を思いっきり叩いた。
本当はバットで叩きたいぐらいだが、法律上やめておこう。
そうです、誤解しないでね。
さっきのセリフはぶっちょ先輩の茶化し言葉だから。
部活中、ベンチに座り、ぶっちょ先輩はケケケッと笑う。
「そうか…ついに付き合い始めたかぁ。」
今度はクククッと笑う。
「なんなんですか、その笑い方。」
「恥ずかしくて彼氏を避けるなんて、ゆーみんらしいや。」
本当は笑い事じゃなくて悩みなんだけどね…。
告白してから全く口を聞いていないから…。
「でも、ゆーみん。お前、留学するんだろ?」
「そうなんですよ…。」
一年の時は晴香がイギリスに行ったらしい。
「ねぇ、頼む!晴香代わってぇ。」
「残念ながら成績が最も優秀な人しか行けないからね。
それが規則ですから…。」
「規則は破るためにあるんだ…。(by ぶっちょ先輩)」
とまぁ、晴香には相手にされなかったわけよ。
「ぶっちょ…。」
柊先輩はため息まじりにぶっちょ先輩を呼び、
こちらへ重たげな足取りで歩いてきた。
「どうだった?」
「話はしてきた。もういいでしょう。」
「なにかあったんですか?」
自分だけ浮いているような気がした。
ぶっちょ先輩は力なく笑った。
(デカサンで隠れた目はどこを向いているのか分からない。)