妹の恋人は姉の彼氏の従弟

姉の恋人宅で

「どう?
愛しの君は元気にしている?」

私は身長の高い廉人さんに
向って言葉を投げる

玄関から居間へ続く廊下で
背を向けてあるく廉人の背中は
広くて男らしい

「大学生になった花音は冷たいよ」

寂しげな声を出す廉人さんに
私は大笑いした

「紫音(しのん)ちゃんこそ
高校生になって彼氏でもできたんじゃないの?」

廉人さんが
居間のドアを開いてくれた

「そんなのいるわけないじゃん!
私の彼女になりたいって女なら
大勢いるけどさぁ」

そう言って
私はふかふかのソファに尻を落とした

足を広げると
自慢の長い足を前に投げ出した

肩にかけていたスポーツバックを
床に置いた

廉人さんは
キッチンに入ると
お茶を淹れているみたいだった

「あ、おかまいなく!
勝手に泊りに来ている身なので」

私は振り返ると
廉人さんに声をかけた

「喉かわいているでしょ?
部活が終わって直行だったんだろ」

「まあ…渇いてるけど
それより洗濯機を借りていい?
金持ちだから乾燥機もあるでしょ?」

廉人さんはぷっと吹き出すと
肩を揺るわせて笑いだす

「どうぞ」

「仕方ないじゃん
明日、大会なんだから!
貧乏な木下家は余計なジャージやユニフォームを
買う予算がないんだ」

「君の父上には十分な給料を
あげているけど?」

「お姉ちゃんの大学費用に
いくらかかっているか知らないだろ?

そういうしわ寄せは可愛い妹に
かかるんだよなぁ」

私は立ち上がると
重たいスポーツバックを持ち上げた

「可愛い妹より
格好良い弟って言ったほうが
合ってるよな」

私の姿を見てから
腹をかかえて
廉人さんが笑った
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