【実話】ありがとう…。
直ぐに連絡下さい。これ、自宅と携帯の番号です」

とメモを渡す。


「ありがとう」

と言って、受け取ってくれた。


「いえ。じゃあ、先に戻ります」


病室に戻るとムッとした顔をして、

「随分遅くね?俺1人煙草吸えねぇし、退屈だったんだけど!」

と子供のように文句を言い、私を恨めしげに睨んだ。


「ごめんって!機嫌直して。ね?」



「お袋と話してたのか?」



「うん、まぁね」



「何話してたんだよー」



「女同士の話だから内緒!」

笑って誤魔化す。


「教えろよ~」



「ダ~メ」

クスクスと笑っていたら、諦めて突然、真剣な顔をする。


「なぁ~」



「うん?」



「毎日来てるけど、家、大丈夫なの?」



「どうしたの?急に」



「いや、ちょっと気になったから…。俺のせいで母さんとギクシャクさせるわけにいかないし」


私の家は―。

父は私が14歳の時にクモ膜下出血で倒れ、20歳の時に、亡くなっている。

母は、父が倒れてから、昼は父の看病をし、夜、寝る間を惜しみ働いて、女手一つで4歳違いの兄と私を育て上げてくれた。


「親には、ちゃんと話した。たかさんの傍に居る


< 55 / 168 >

この作品をシェア

pagetop