【実話】ありがとう…。
すると、

「佐藤さん、先生がお話あるので、詰所に来て下さい」

と看護師が言い、病室を出て行く。


「分かりました」

返事をし、お母さんとたかさんは病室から出て行く。


1人病室に残され―‐…。


私も一緒に聞きたいけど、一緒には行けない。


病室に1人居るのも嫌で、喫煙所へ向かう。


煙草を吸いながら、窓の外を眺める―。


「何だか落ち着かないな」


煙草の煙を吐き出し、吸殻を灰皿に捨て、窓の外に目をやる。


ただボーッと外の景色を眺める。


どの位そうしていたのだろうか…。


「望」


振り向くとたかさんが立っていた。


「終わって部屋に戻ったら居ないから、多分ここだろうなと思ったら、やっぱり居た」

と微笑んだ。


微笑み返す望。


「肺に転移してるとは聞いてたけど、20ヵ所以上だとは思わなかったよ」

と苦笑いしたね。


「抗がん剤治療したら、不妊症になるから、精子保存しますか?って聞かれたけど、今の俺には、そんな事まで考える余裕なんてねぇのにな…」

そう言ったたかさんの表情は、凄く切なそうで、でも…俺は負けない!って言ってるようだった。


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