【実話】ありがとう…。
何も言えず、俯いていると―。


「明日、札幌総合病院に受診して来いって言われた」



「うん…」



「病室空き次第、転院だってさ。まぁ、ここに居ても、ろくな治療してないからな。部屋に戻るぞ」



「うん」



部屋に戻り、他愛もない話をしていたら、

「望ー。帰っても良いんだぞ?」



「ん?」



「お前、今日明けだし、疲れてるんだから、帰って体休めろ。な?」



「う~ん。分かった…。じゃあ、帰るね?」



「下まで送ってやるよ」



「いいよ。大丈夫だから」



「じゃあ、エレベーターの前まで」

そう言い、病室を出て、エレベーターへ向かっていると、後から声を掛けられる。


「のんちゃん?」

振り向くと、そこには、制服を来た斎藤さんが立っていた。


「斎藤さん…何でここに?」



「高看の実習で来てるんだ」



「そうなんだ…。たかさん、部屋戻って良いよ、ありがとう」

そう言うと、たかさんはおうと返事をし、斎藤さんに軽く会釈をして、病室に戻って行った。


斎藤さんが何を言いたいのか分かっていた。
だから…たかさんに病室に戻って貰った。


< 60 / 168 >

この作品をシェア

pagetop